東京高等裁判所 昭和37年(ラ)399号 決定
不動産に対する強制競売手続は不動産そのものを換価し、その代金を債権者に交付または配当し、その満足を得しめることを目的とするものであるが、債務者において当該不動産を占有する場合においては、代金全額を支払つた競落人を簡易迅速に不動産強制競売の実を挙げようとするため民事訴訟法第六八七条は執行裁判所をして執行吏に命じ債務者の占有を解き当該不動産を管理人または右競落人に引渡さしむべきものとしたのである。したがつて、右引渡の執行手続は不動産競売手続に付属し、独立の執行手続を構成するものではないから、その申立の時機についても自ら限定を受け、代金支払後遅滞なくこれをなすことを要するものと解すべきである。
本件記録によれば、競落人がその代金全額を支払つたのは昭和三六年一〇月二五日であり、本件引渡命令の申立をしたのは昭和三七年六月二七日であつて、この間八ケ月を経過していることは明らかである。
けれども、競売代金完納後もなお代金交付、場合により配当実施の手続が競売裁判所において行われることなどを考えると、競落代金完納後八ケ月を経過してなされた申請をもつて直ちに遅滞してなされたものであると断ずることはできない。競売裁判所はなおこれらの点を審理の上決定すべきである。
(牧野 浅賀 渡辺)